空中戦=上の空?ウェブ学会シンポジウム


東大で開催された「第1回ウェブ学会シンポジウム」に参加してきた。

ITmedia News)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0912/07/news102.html


平日の10:00〜18:00というスケジュールにもかかわらず、
安田講堂にはのべ1,000人ほどの参加者がいた模様。


産学官の著名人が発表者に名を連ねており、
確かに発表のいくつかは興味深かったし、
プレゼンのクォリティも高かった。
「空中戦」と名づけられた(?)、
東浩紀濱野智史津田大介らによるパネルディスカッションも
まとまりこそなかったが(笑)面白かったし、会場は盛り上がった。


けれども、
肝心の「ウェブ」に関して、特に目新しい内容の発表はなかった。


今回のシンポジウムの一番の収穫は
Twitterの影響力と潜在能力を、参加者がみな体感できたことではないだろうか。


発表者への質問はすべてTwitter
#webgakkaiというタグの付いた参加者のTweet
スタッフが片っ端からチェックしていたようだ。
また発表の様子はストリーミング動画で配信され、
会場に来られなかった人々はそれを見ながらコメントをTweet


従来であれば、こうしたイベントに参加した後は
まず家に帰ってから内容をじっくり咀嚼してブログに書き、
2、3日して他の参加者のブログがGoogleに出まわる頃に
それらを確認、というような流れだった。


ところが今は、発言の途中であるにもかかわらず、
Twitter上ではリアルタイムにコメントやツッコミが入る。


聴衆の多くは、発言者のいるステージではなく、
持参したPCやiPhoneの画面を見ており、
(下の写真を見ればノートPC持参率が高いことがわかる)
感想をすぐにその場でTweetし、同じ会場にいる誰かのTweetをチェック。
(入力に夢中になって、講演内容は上の空ではないのだろうか?)



同じ会場にいる1000人近い見知らぬ人々の多くが
Twitterによって「つながっている」という感覚が
さらにTweetを盛り上げていたようだった。


はっきりいって、
わざわざ旅費と時間をかけて会場に行く必要はなかったのかも知れない。
今後この手のイベントは
セカンドライフ(もはや時代遅れか)のようなバーチャルな空間で
アバター同士に語らせるだけで済むような気がする。


Twitterによる実況は、
確かに即時性という点では画期的だけれども
ブログと比べると、内容をじっくり咀嚼する時間を持たないので
単純で性急な結論に走ってしまう危険性があるような気がする。


たとえば今アメリカでは、
新しく封切られる映画が、金曜日に公開を開始して
翌土曜日にはめっきり観客が減ってしまうケースが増えているという。


初日にその映画を見た観客の多くが、
その日のうちに、あるいは見終わったばかりの映画館で
「つまらなかった」というような感想を大量にTweetするので
それを見た人が映画に来なくなるかららしい。


見終わった直後はよくわからなかったり、つまらなかったりしても、
数日たってから、あるいは数年たってから
その良さがじわじわと身に染みるような作品もあるはずである。


Twitterの書き込みはブログと違って刹那的であり
後からじっくり読み返したりするものではないので
これはこれでいいのかも知れない。


今回はとにかく「Twitterのパワー」を実感させられた。
そのパワーを肌で感じられただけでも、
わざわざ授業を休講にして出かけた価値があった。