届かぬラブレター
「ラブレターって、何?」
テキスト講読の授業中に、ある学生がそう質問した。
そして私は軽い衝撃を受けたのだった。
電通のクリエイターが書いた『明日の広告』という新書の中で
広告・CMというのは、送り手/制作者が消費者に向けて書いた
ラブレターのようなものだ、と書かれた部分を読んでいた時のこと。
彼女は「ラブレター」という言葉の意味を
知らなかったわけではない(たぶん)。
その文脈で「広告はラブレターだ」という比喩を
実感・リアリティを持って理解できなかったのだ。
つまり、彼女たちの世代(10代後半)は
メールで告白や別れ話をする世代なので
「ラブレター」などと呼ばれるアナログな代物は
書いたこともなければ
受け取ったことも見たこともないのだ。
私が自分で読んだ際には、適切な例えだと感じていたので
その部分を理解できない読者がいるなんてことは
夢にも思わなかった。
だから、前提条件からひっくり返されてしまい
ビックリするとともに、ちょっと反省させられたのだ。
ウェブで情報発信を行う際には
誰にでもわかる言葉で書くように意識しているつもりでも
「ラブレター」なんていう単語一つで
メッセージが伝わらなくなったりすることもあるということだ。
そういう意味では、私にとって貴重な授業となった。
ちなみに『明日の広告』は
10代の若者に向けて書かれた本ではないので
筆者の佐藤氏に罪はありません。